健康のための事について書いています。

 
 
 

   まとめに向けて  



ピン死の四重奏:
  健康の話をしていて、逆のことになってしまうのですが、死の四重奏という話です。ショスタコーヴイチという作曲家がいますが、晩年の弦楽四重奏曲、第11番から15番までの5曲ですが、これには作曲者自身の悲しみが表に出て、死をも連想させると言われています。特に第13番はヴィオラが主体に奏でられるためか、その音色により悲しみが助長され、感動的なハーモニーを展開しています。1989Kaplanという人は動脈硬化から来る病気、特に狭心症や心筋梗塞の発症に、上半身肥満、耐糖能異常、高中性脂肪血症、高血圧を併せ持つことが大きく関与するとして、死の四重奏と呼びました。
  耐糖能異常とは前に出てきた糖尿病と正常の中間に当たる境界型と糖尿病の両方と考えてよいでしょう。高中性脂肪血症はコレステロールの高い状態、すなわち高脂血症と考えてよいでしょう。つまり、肥満、高血圧、高脂血症、糖尿病の4つがあって、それを放っておくと徐々に血管の動脈硬化が進み、心筋梗塞や脳卒中を引き起こしやすくなってしまいます。したがって、肥満、高血圧、高脂血症、糖尿病のある人は要注意です。肥満のある人で糖尿病ではないと考えている方も、もしかしたら糖負荷試験をすると糖尿病かもしれないので、砂糖水を飲んで血糖を測定する糖負荷試験をした方がよいかもしれません。これに、喫煙、タバコが加わると死の五重奏と呼ばれ、なおさら動脈硬化のリスクが高くなります。
  上半身肥満についてですが、身長と体重のみから肥満を計算すると、筋肉質の人も中年太りの人も同じ肥満度になってしまい、動脈硬化から来る病気を起こしやすいかどうかにはピッタリ当てはまらない場合があり、肥満を上半身肥満と下半身肥満に分けると、上半身型の方が病気を起こしやすいということで注意するようになってきました。肥満を上半身型と下半身型に分ける簡単な測定方法として、巻尺でお腹の一番太い所のウェストを測り、次にお尻の一番太い所のヒップを測り、ウエストをヒップで割ってウエスト/ヒップ比を求めます。このウエスト/ヒップ比が大きい場合を上半身型肥満またはリンゴ型肥満と呼びます。これはお腹の周りに肥満が目立つ体型、いわゆる中年太りで、生活習慣病のリスクが高くなります。逆に若い女性に多い下半身肥満は、尻や太ももに脂肪が付くタイプで洋なし型と呼ばれていますが、妊娠、出産に必要不可欠な体型と言ってもよいかと思います。
  肥満をさらに分けていくと、上半身肥満にも腸の周りに脂肪が溜まる内臓脂肪型肥満とお腹の皮のすぐ下に脂肪が溜まる皮下脂肪型肥満があります。上半身肥満のうち内臓脂肪型肥満のほうが危険で、ウエスト/ヒップ比で言うと、男性の場合0.95以上、女性の場合0.8以上が内蔵脂肪型肥満の目安になり、生活習慣病を起こしてくるという点から特に注意を要する状態です。
  死の四重奏が怖いのは、徐々に動脈硬化が進行しても初期の段階では、殆ど自覚症状がなく、症状が表れたときにはかなり進行しているからです。これは前に述べた病気を放置しないということとも関連しています。
  次にどうして肥満がいけないかということについて述べてみたいと思います。近年、脂肪細胞の働きが解明され、脂肪細胞が生活習慣病と深くかかわっていることが分かってきました。脂肪細胞は、余ったエネルギーを脂肪にして蓄えるだけでなく、体内でさまざまな作用をする物質を出しています。例えばTNF-αは、糖の代謝にかかわる物質で、これが体内で増えると糖尿病を起こしてきます。PAI-1は、血液の凝固に関係する物質で、血栓や動脈硬化の促進と深くかかわっています。アンギオテンシノーゲンは、血圧を上げる物質を作り出す酵素です。ちょっと聞きなれない言葉ばっかりだったと思いますが、太ってくると、脂肪細胞から出るこうした物質の量が全体的に多くなり、糖尿病や高血圧、高脂血症、そして動脈硬化を起こしやすくなります。つまり、体に脂肪が必要以上に多くつくこと自体、直接体に悪い作用をしていると言えます。病気がなければ太っていても構わないのではなく、体に脂肪が多くついているという状態が危険なのだということをよく理解して、体重を減らす努力が大切です。その他に、脂肪細胞から分泌されるレプチンは脂肪の貯蓄量の調節に関与していて、肥満との関係について研究中です。

ピン生活習慣病:
  今まで、何の説明もせず生活習慣病という言葉を使ってしまいましたが、その生活習慣病についてです。平成812月、旧厚生省、公衆衛生審議会が生活習慣病という言葉を提唱しました。同じようなことは前々から成人病という言葉で言われていましたが、これは40歳前後から起こり、主な死亡原因となる病気として、脳卒中、癌、心臓病を三大成人病と呼んでいましたが、成人病の原因には生活習慣が大きく関与していることが分かり、生活習慣病と呼ぼうということになりました。生活習慣病とは、食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒等の生活習慣が、その発症・進行に関与する疾患群ということですが、分かりやすく言うと、食事、運動、タバコ、酒の習慣で起こってくる病気です。食生活から起こる生活習慣病には、糖尿病、肥満、高脂血症、高尿酸血症、心臓の狭心症、心筋梗塞、大腸癌、歯槽のうろうなどがあります。運動習慣に関係する病気としては、糖尿病、肥満、高脂血症、高血圧などがあります。タバコに関係する病気としては、一部の肺癌、狭心症、心筋梗塞、慢性気管支炎、肺が膨らむ肺気腫、歯槽のうろうなどがあります。酒に関係する病気としては、脂肪肝、肝炎、肝硬変、慢性膵炎、高尿酸血症すなわち通風があります。骨が薄くなる病気の骨粗鬆症もカルシウム不足の食生活、運動不足、日光浴の不足などで起こることを考えると生活習慣病と呼んでよいかと思います。
  こうした生活習慣病を予防あるいは治療するためには、生活習慣を見直すこと、すなわちライフスタイルを健康的な方向へと変えていくことが重要です。21世紀の医療では、病気に対する理解を深め、病気にならないようにライフスタイルを変えるように、医者と患者が一緒になって努力することが大事です。別の言葉で言えば、治療の時代から予防の時代になってきています。

ピン遺伝子の問題:
  まず、人類が誕生した頃の太古の昔は、狩猟生活でいつ獲物が取れるか分からない、現実は非常に厳しいもので、寿命も短かったと推測されます。怪我もしやすかったでしょうし、血がすぐ止まるとか怪我にも強くなければいけなかったと思います。水もいつでも飲めるわけではなく、病気といえば感染症が多かったと考えられます。つまり、太古の昔は飢えと渇きと怪我と感染症との闘いであったということです。
  人類の歴史を一日に短縮して考えてみて、午前0時を十万年前の人類が誕生した時期とし、現在を24時とします。そうすると、日本で農業を始めたのが2343分、工業が始まったのが2359分、つまり長い日本人の歴史の中で腹いっぱい物を食べる生活ができるようになったのは、人類史のほんの数十秒にすぎないということになります。ところが、遺伝子は一万年前の飢餓時代のままで、人間の遺伝子が新しい環境に適応するように変化するためには十万年くらいはかかるだろうと考えられています。こうした飢えと渇きの時代から、いつでも食べ物、飲み物がある時代への急激な変化に遺伝子が対応する暇がなくて、現代人は生活習慣病に代表されるような病気にかかりやすくなっています。
  アメリカのニールという先生は、人間の遺伝子の中には倹約遺伝子型があるはずだという仮設を出しています。つまり、食べ物が少ない時代には倹約遺伝子型を持っている、少ないエネルギーで生き残ることができる人が残れるということです。実際の活動には必要最小限のエネルギーを使い、余ったエネルギーは脂肪として蓄えるわけです。したがって、この遺伝子型を持っている人は脂肪がつきやすいため、肥満、糖尿病になりやすいと考えられます。
  太古の昔は水がいつでもあるわけではなく、渇きにもさらされているという話をしましたが、塩もないので塩分の摂取量もうんと少なかったのではないだろうかと考えられます。そうすると、水や塩が不足する状態でもこれを節約して体内を水々しく保たなくてはならない、つまり、昔は体の中を循環する血液の量を多くする方向に発達していたと考えられます。これは言い換えれば血圧を高める方向です。血圧を高めることに関係している、アンギオテンシノーゲンという物質の遺伝子の研究が進んでいますが、これがTT型の人はTM型、MM型の人よりも、ナトリウムと水を溜めて高血圧になりやすいということが分かっています。しかも、日本人の8割がこの高血圧になりやすいTT型の遺伝子を持っています。つまり、生まれながらにして高血圧になりやすいわけで減塩などの予防が重要です。
  今、糖尿病、肥満、高血圧を起こす遺伝子の研究が猛烈な勢いで進んでいるので、将来的には、そういう遺伝子を持った人たちに対して個別的に生活習慣を変える教育をして予防するということが可能になるでしょう。

ピンまとめ:
  健康であるということは、何の病気もしたことがない、薬も一つも飲んでいないという、つるっとした体だということではありません。手術をしたとか、色々薬を飲んで定期的に医者にかかっていてもよいのです。予防を含めて病気がコントロールできている状態が健康であると考えてよいかと思います。今まで、色々なことを述べてきましたが、健康であるためにはどうしたらよいのかをまとめてみましょう。まず、食事では季節の色々な食材をバランスよく食べ、塩分、コレステロールは控え目に、肥満のある人や超尿病の人は全体的なカロリーも考えること。そして、適度に運動すること、タバコは止める方向で、酒は控え目に、ストレスは溜めずに発散、悪い生活習慣は改めること。定期的に健康診断をすること、血圧でもコレステロールでも放置しないことといったようなことかと思います。まとまりのない内容でしたが、皆様の健康維持に少しでも役に立てればと思います。

日本医師会ホームページ

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2015/1/16 更新


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